ギークなエンジニアを目指す男

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予期的UXという概念がとてもしっくりきた話

みなさんこんにちは。たかぱい(@takapy0210)です。

最近、UX白書*1で述べられている「予期的UX」という言葉を知り「まさにこのUXを上げるために試行錯誤してるんだよな〜」と、しっくりきたので、まだ完全に理解したフェーズ*2ではありますが、ここに今感じていることをメモしておこうと思います。
(ちなみに色々調べてみると、すでに素晴らしい記事が公開されていましたので、こちらを見ていただいた方が理解は進むと思います)

この記事はコネヒト Advent Calendarのカレンダー 16日目の記事です。

adventar.org

UX白書とは

2010年にドイツでUX概念の議論が行われ、その内容が「UX白書」として世に広まったらしいです。

このUX白書では、『UXは「現象( phenomenon)として」 「研究分野( afield of study)として」 「実践( practice)として」などの異なった視点から捉えることができる』と述べられており、その中でも 「現象としてのUX」と 「実践としてのUX」にフォーカスして記されています。

また、UXとは何か、UXではないものは何か、といったUXの基礎的なな部分から、UXに影響を与える要素は何か?など、発展的な内容まで幅広く記されています。

その中でも特に印象的だったのが、商品やサービスの「利用前」から「利用後」と「全体」を期間別に分類する手法である「ユーザエクスペリエンスの期間」という概念でした。 これは時間軸でUXを認識することで、「どの期間のUXなのか?」の認識合わせや相互理解を行うことができるものとなっており、この時間軸の最初に登場するのが、タイトルにもある「予期的UX」という言葉でした。

UX白書 より引用

UX白書の原文はこちらから読むことができます。
ありがたいことに日本語訳されたものも公開されています。

予期的UXを紐解く

そもそもこの予期的UXってなんぞ?という話なのですが、僕は最初にみた時、サービス初回利用以前の期間の「どこでサービスを知り、どんな期待値を持ってサービスを使い始めるのか」という、いわゆる広告やプロモーション領域の話を指していると思いました。

ところが、UX白書を読んでみると以下のような記述があります。

「経験する」と 「ある経験」の間にある差とは、 UXに焦点を当てるときに適切な期間の差 なのかという疑問が生じます。 極端に言えば、 誰かが非常に短い一瞬に何を経験するか、 例えば利 用中の直感的な反応などに焦点を当てることも可能でしょう。 またその一方で、 何ヶ月かのもしく はそれ以上におよぶ体験の中で、 利用中のエピソ ードや利用していない時間を通して形成される、 累積された経験に焦点を当てることも可能でしょう。 その結果、UXは、インタラクション中に感 じる感情の特定の変化 (一時的UX )、ある特定の利用エピ ソ ードに関する評価 (エピソード的UX )、 特定のシステムをしばらくの期間利用した後の見方(累積的UX)で表されます。 予期的UXとは、ユー ザーにとっての初めての利用よりも前の期間、あるいは上述の3つのUXの期間よりも以前のこと だと言えます。 なぜなら、 人はインタラクション中のある特定の瞬間、 利用エピソード、 システム の利用経験後の生活を想像するかも知れないからです。

なので、予期的UXは

  1. サービスの初回利用以前の期間
  2. 「一時的UX」「エピソード的UX」「累積的UX」といった各UX期間の前

のことを指していることが分かります。

ユーザーエクスペリエンスの期間図を解釈する

ここでもう一度先に挙げた図を見てみます。

これを見てみると、いくつか矢印が出ていることが分かります。

矢印は「自身からループしている矢印」と「前の区分から出ている矢印」の2種類があります。

ここで注目したいのは、予期的UXには自身からのループ以外に、別の区分それぞれから3本の矢印が向かってきているということです。

Webサービスに限らず、日常的に、ある体験の前には必ず予期的な体験(いわゆる期待値的なもの)があり、それは、それ以前の体験から影響を受けるという感覚は自然に感じます。

例えば、Youtubeを開くときは以前の体験から期待する予期的UXがあり起動という行動を起こしますし、そこでまた新しい体験をすることで、次回の予期的UXが創られているんだと思います。
「またディズニーランドに行きたい!」と思うのは、過去の体験が素晴らしいものであり、あのアトラクションに乗りたい、あのショーが見たい、日常を忘れたい、など「あの体験をもう一度」みたいなことを思う方が多いのではないでしょうか。

UX白書の中でも以下のように述べられています。

UXはライフサイクルや旅のようなものとして構造化することもできます。 例えば、初めての出会いから、 何度か使ってみた時のエピソードを経て、 使っていた時のことを思い返すという構造です。 これまでに使ってきた経験はこれからの使い方に影響をおよぼします。 例えば、何かを使ってみた 一回の経験を思い返し、 それを語ることによって、 今後の使い方が予測されるでしょう。 さまざまな経験がいろいろな順番で互いに幾重にも重なり合い、 利用前に想像していた状態から利用後にあれこれ思い返す状態まで、UXに決まった流れはないのです。

利用と非利用の期間からなる、時の経過につれたUX

そう言った意味でも、「サービス初回利用以前の期間」だけでなく、サービスを継続的に利用している中でも、この「予期的UX」は必ず通る道となっていそうです。

つまるところ、予期的UXとは何者なのか?

予期的UXは体験の中でも唯一行動(サービスの利用)に影響を及ぼせるものだと言えそうです。

サービス内での素晴らしい成功体験(一時的UX・エピソード的UX)や、長期的に構築したブランド(累積的UX)なども、予期的UXを通して影響するものと言えそうです。

そう考えると、何事もこの予期的UXにフォーカスして設計するのが大事そうです。

おわりに

僕はこの概念を知る前までは「サービスを起動する前の期待値を上げる」みたいな言い方をしていましたが、それがまさに今回の予期的UXなのでは?と感じています。

予期的UXも結局のところ考え方の1つで、「予期的UXを上げるための体験ってどういうものがあるのかな?」とか、「こういう予期的UXがあると行動してくれそうだよね」という会話の一部として使っていくのが良いのではないかと思いました。

参考文献